色即是空、空即是色
「色即是空、空即是色」という言葉をご存じですか?
これは般若心経に出てくる言葉で、簡単にいうと、目に見えるものや形あるものは、固定されたものではなく、さまざまな条件や関係によって成り立っている。そして、形がないとされる「空」も、現実の世界と切り離されたものではないという意味です。
少し難しく感じるかもしれませんね。
私たちは普段、目に見えるものや、今起きている出来事を「変わらない現実」として受け止めがちです。
あの人はこういう人。自分はこういう人間。今の状況はこうだから、これからもきっと変わらない。
けれど、人の気持ちも環境も、物事の状況も、ずっと同じではありません。昨日までうまくいかなかったことが、思いがけないきっかけで動き出すこともあります。
そう考えると、今目の前にある現実が、永遠に続くとは限らないのです。
さて、私たちの生きる世の中には、理不尽なことがたくさんありますよね。
真面目に努力している人が報われないこともあれば、無責任な人が得をしているように見えることもある。相手のためを思って行動したのに、誤解されたり、裏切られたりすることだってあります。
どうして自分ばかりこんな目に遭うのだろう。あの人はなぜ、あんなことができるのだろう。
納得できない気持ちを抱え、何度も考えてしまうこともあるでしょう。
けれど、そこで少しだけ立ち止まってみてください。
私たちは、目の前の出来事だけを見て、その意味を決めつけてしまうことがあります。今は失敗だと思っていることが、後になって大切な学びになるかもしれません。苦手だった人との出会いが、自分の価値観を見直すきっかけになることもあります。
もちろん、つらい出来事を無理に良いことだと思う必要はありません。理不尽な扱いを我慢する必要もありません。
ただ、今の出来事だけで、自分の人生すべてに結論を出さなくてもいいのです。
「色即是空、空即是色」という言葉を、日々の暮らしに重ねてみるなら、目の前の現実も、自分
が抱いている感情も、ずっと同じ形で存在し続けるわけではない、と考えることができるのではないでしょうか。
今は苦しくても、状況は変わるかもしれない。今は理解できなくても、いつか違う見方ができるかもしれない。
理不尽な世の中だからこそ、目の前の出来事に心を縛られすぎず、少し広い視点で物事を見てみる。
変えられないものに執着し続けるのではなく、自分にできることを考え、必要なら距離を置き、新しい道を選んでいく。
すべてを思いどおりにすることはできません。でも、起きた出来事をどう受け止め、これからどう生きるかは、少しずつ自分で選んでいくことができます。
今の苦しみが、あなたの人生のすべてではありません。
そう思えるだけでも、心に少し余白が生まれるのではないでしょうか。
