馬のたたりだったのでしょうか?
今日は、少し不思議な昔話を。
今からン十年前。
私がまだ思春期まっただ中だったころのお話です。
父の仕事の都合で、私たち一家は母の実家へ引っ越しました。
古い家で、家の脇には大きな小屋がありました。
昔はそこで、馬や牛を飼っていたそうです。
祖父は事業をしていて、馬を飼い、人を雇い、山を開墾していたのだとか。
引っ越して数日後。
母が、不思議な夢を見るようになりました。
馬が泣いている夢です。
ひひーん……。
ひひーん……。
涙を流しながら、何かを訴えるように鳴いている。
それが何日も続いたそうです。
「何かあったんだろうか」
そう思った母は、馬を祀っている神社へ向かいました。
一升瓶のお酒を持って行き、拝んでもらったそうです。
すると、その日から、馬はぱったりと夢に出てこなくなりました。
私がその話を聞いたのは、大人になってからのこと。
「……何かあったんだろうねえ」
そう呟く母。
けれど、当時を知る人たちはもう散り散りで、本当のことは分かりません。
ただ。
昔その場所で生きていたお馬さんの何かがそこに残っていて、
かつて暮らしていた母が戻ってきたことで、気づいてほしくて現れたのではないか。
そんな話を、母としていました。
馬のたたりだったのか。
それとも、ただ想いが残っていただけなのか。
今となっては分かりません。
でも私は、その話を母がするたびに視えてくるものがあるのです。
馬とともに働いている笑顔の祖父の姿を。
そして、静かにこちらを見ている、大きなお馬さんたちの姿を。
合掌をし、私は静かに鈴を鳴らしたのでした。
